印刷物の色味はなぜ希望通りに出せないのか?

印刷物を制作する際、クライアント様からは「色が少し違うので、指定した色をそのまま再現してほしい」というご要望を多くいただきます。
しかし実際には、印刷会社や印刷方式、使用する紙、インキなどの条件によって、同じデータでも仕上がりの色味が微妙に変わってしまうことがあるのです。
今回は、その原因と対策をご紹介します。
1. 印刷方式ごとの色味の違い
- オフセット印刷
紙に直接インキを転写する方式。高品質だが、版の擦り合わせ(インキの濃度や紙との相性)によって色味にばらつきが出やすい。 - デジタル印刷
プリンターで直接出力。小ロットに向くが、機種やカートリッジの種類によって色の深みや発色が異なる。 - オンデマンド印刷
オフセットとデジタルの中間的な方式。版を作らずに版ずれはないが、デジタル印刷と同様に機械間の差が出やすい。
2. インキと用紙がもたらす影響
- インキの調色・配合
- 同じCMYK比率でも、各社が独自に調整したインキを使用すると微妙に色調が異なる
- 特殊インキ(蛍光色やメタリックなど)を使う場合、再現性がさらにシビアに
- 用紙の白色度・表面性
- マット紙/コート紙/上質紙など、紙の種類でインキの乗り方や透け感が変わる
白色度が高いほど色が鮮やかに出るが、紙粉や表面の凹凸が影響する
3. カラープロファイルと校正の重要性
- RGB ⇔ CMYK の変換
モニター上のRGBカラーは、CMYKのインキで完全再現できない色域がある - ICCプロファイル
各印刷会社が提供するプロファイルを使うことで、モニター上である程度仕上がりイメージを補正可能 - 校正(プルーフ)
本番印刷の前に試し刷りを行い、色味を確認・調整するステップは必須
4. ご提案できる対策
- 印刷会社選定時にプロファイルを入手
先方のICCプロファイルをもらい、自社デザインデータに適用 - しっかりとした色校正を実施
校正紙やデジタルプルーフを確認し、修正指示を的確に - 紙見本帳での比較
用紙見本帳(スワッチブック)で仕上がりイメージを共有 - 特色インキの利用
特定の色を厳密に再現したい場合は、CMYKではなくDICやPantoneの特色インキを検討
まとめ
印刷会社ごとに使用機材やインキ、用紙、プロファイルが異なるため、同じデータでも色味に差が出るのは避けられません。
希望通りの色を再現するためには、事前のプロファイル共有や校正、特色インキの活用といったプロセスをしっかり行うことが大切です。
これらの対策を踏まえてクライアント様と密にコミュニケーションを取り、納得いただける仕上がりを目指しましょう。