【実体験】あなたのライブ配信は大丈夫?共用Wi-Fiが招いた悪夢と、プロが教える絶対に失敗しない回線戦略

こんにちは!プロデューサーのりっき~です。
今回は実体験を基にした「共用Wi-Fi」についてお話をしたいと思います。
実は先日の現場で、リハーサル時にはスムーズに配信出来ていた映像が、本番になると急に配信できなくなりました。
配信サーバーに映像を送信できない!
思い当たるのは、回線しかありません。
リハーサル時に回線速度を調べると。200Mbps以上の上りスピードが出ていましたが、その時調べるとなんと1Mbpn…
急遽私のスマートフォンの回線速度を調べ、テザリングを使って、回線を復旧させました。
ではこのようなことを起こさないために、どうすればいいのでしょうか? 少し考えてみたいと思います。
Contents
共用回線は「悪魔のささやき」
イベント会場やホテル、コワーキングスペースなどで「ご自由にどうぞ」と提供される共用Wi-Fi。
それは一見、コストもかからず手軽に利用できる「天使の助け」のように思えるかもしれません。
しかし、ことライブ配信においては、その手軽さこそが「悪魔のささやき」なのです。
なぜ、共用回線は危険なのでしょうか。その技術的な理由を紐解いていきましょう。
「上り速度」の罠:ライブ配信はWeb会議とは違う
Web会議(ZoomやTeamsなど)であれば、多少の上り速度の不安定さは、システム側である程度吸収してくれます。
しかし、高画質・高音質な映像を安定して長時間送り続けるライブ配信では、細く不安定な上り回線は致命傷となります。
フルHD(1080p)の配信であれば最低でも10Mbps、4K配信ともなれば30Mbps以上の安定した上り速度が推奨されますが、共用Wi-Fiでこれを満たすことは、まず不可能と言っていいでしょう。
ベストエフォートという名の「速度保証なし」契約
日本のインターネット回線の多くは「ベストエフォート型」と呼ばれる契約形態です。
「ベストエフォート(best effort)」とは、「最大限の努力はしますが、結果を保証するものではありません」という意味。
つまり、「最大通信速度1Gbps!」と謳っていても、それはあくまで理論上の最大値であり、常にその速度が出ることは保証されていないのです。
共用回線は、このベストエフォート型の典型です。
一本の光回線を、その場にいる数十人、数百人で分け合って使います。
これは、片側一車線の一般道を、たくさんの車が同時に走ろうとしているようなものです。朝夕のラッシュアワーに道路が渋滞するように、多くの人が一斉に通信を始めれば、回線はあっという間に混雑し、速度は著しく低下します。
私のトラブルのケースもまさにこれでした。
イベント開始前は利用者が少なく快適だった回線が、開場と同時に多くの来場者が接続したことで、配信に必要な帯域を確保できなくなってしまったのです。
パケットロスとジッター:映像と音声を蝕む見えない敵
回線が混雑すると、「パケットロス」と「ジッター」という現象が発生しやすくなります。
- パケットロス: 送信したデータ(パケット)が、途中で消失してしまう現象。映像がコマ送りのようになったり、音声が途切れたりする直接的な原因となります。
- ジッター: パケットがサーバーに到達する時間の間隔が、バラバラになってしまう現象。これにより、映像や音声に歪みや乱れが生じます。
これらは、回線品質を測る重要な指標ですが、共用Wi-Fiのような不安定な環境では、いつこれらの「見えない敵」が襲いかかってきてもおかしくありません。
高品質な配信とは、単に速度が出ているだけでなく、このパケットロスやジッターが限りなくゼロに近い状態で、初めて実現できるのです。
セキュリティリスク:あなたの配信は丸見えかもしれない
利便性と引き換えに、共用Wi-Fiには常にセキュリティのリスクがつきまといます。
暗号化がされていない、あるいは脆弱なパスワードで運用されているWi-Fi環境では、悪意のある第三者によって通信内容が盗聴される「中間者攻撃」などのリスクに晒されます。
企業の内部情報や未公開情報を含むようなクローズドな配信を、セキュリティの甘い共用回線で行うことは、情報を衆人環視の中で晒しているのと同じくらい危険な行為です。
コンプライアンスの観点からも、ビジネスにおけるライブ配信で共用回線を選択することは、絶対に避けるべきです。
絶対に失敗しない!プロが実践する盤石の回線戦略
では、どうすれば悪夢のようなトラブルを避け、盤石の体制でライブ配信に臨むことができるのでしょうか。
ここからは、プロの現場で実践されている、具体的かつ効果的な回線戦略をステップ・バイ・ステップでご紹介します。
【絶対条件】配信専用の「単独有線LAN」を確保せよ
これがすべての基本であり、絶対条件です。
物理的なケーブルで接続された有線LANは、無線に比べて圧倒的に安定しており、外部からの干渉も受けにくいため、配信の生命線として最も信頼できる選択肢です。
▼会場との交渉チェックリスト
以下のチェックリストを元に、具体的な要件を伝え、確実な回答を得てください。
- 配信専用として「単独で」利用できる有線LANポートを借用可能か?
(NG例:「他の部署でも使っている回線ですが、速いですよ」→これは共用回線です) - その回線の上り・下りの「保証速度(帯域保証)」はどれくらいか?
(もしベストエフォート型なら、過去の実測値や、他の利用がない状態での速度をヒアリング) - 推奨される上り速度(フルHDなら10Mbps以上、4Kなら30Mbps以上)をクリアしているか?
- 事前に現地で、PCを持ち込んでの回線速度テストは可能か?
(Speedtest.netなどのサイトを使い、必ず「上り速度」を計測する
できれば3つぐらいのサイトで各サイト3回程度調べ、その平均値を出すと確実です) - ファイアウォールなどで、配信に必要なポートがブロックされていないか?
(利用する配信プラットフォームの推奨設定を確認し、会場のIT担当者に伝える)
これらの質問に明確に答えられない、あるいは協力が得られない会場の場合、自前で回線を手配するか、最悪の場合、会場の変更も検討すべきです。
それほどまでに、回線は重要なのです。
【必須の備え】バックアップ回線という名の「保険」
どれだけ強力な有線LANを確保できたとしても、予期せぬトラブルは起こり得ます。例えば、誰かが誤ってLANケーブルを抜いてしまう、大元のルーターが故障する、といった人的ミスや機材トラブルです。
そこで重要になるのがバックアップ回線です。
メインの有線LANに何かあった際に、瞬時に切り替えて配信を継続するための「保険」を必ず用意しておきましょう。
スマートフォンのテザリング
私のトラブルを救ってくれたのが、このテザリングです。最も手軽に用意できるバックアップ回線と言えるでしょう。メリット:
- 追加機材不要。普段使っているスマートフォンですぐに利用できる。
- スマートフォンのバッテリーを激しく消費する。
- 長時間の利用で本体が発熱し、動作が不安定になることがある。
- キャリアのプランによっては通信量の上限がある。
- 電話の着信で通信が切断されるリスクがある(機内モード+Wi-Fiテザリングで回避可能)。
モバイルルーター(ポケットWi-Fi)
テザリングより一歩進んだ選択肢が、モバイルルーターです。メリット:
- スマートフォンと役割を分担できるため、バッテリーや発熱の心配が少ない。
- 複数のPCや機材を同時に接続できる。
- 法人契約などで大容量プランを選択できる。
- 事前の契約と機材の準備が必要。
- 利用するキャリアの電波が届かないエリアでは使えない。
- やはり通信量制限が懸念される場合がある。
【究極の安定】複数の回線を束ねる「ボンディング」
プロフェッショナルな放送現場や、絶対に失敗できない大規模配信で常識となっているのが「ボンディング(Bonding)」という技術です。
ボンディングとは、複数の異なる回線(有線LAN、Wi-Fi、複数のモバイル回線など)を専用のハードウェアやソフトウェアで束ね、仮想的に一本の極めて強力で安定した回線を作り出す技術です。
メリット:
- 圧倒的な安定性:
束ねた回線のうち一本が途切れても、他の回線が即座にカバーするため、配信が途切れることはない。 - 帯域の増強:
各回線の上り帯域を合算できるため、高画質配信に必要な帯域を安定的に確保できる。 - 場所を選ばない:
モバイル回線だけでも複数束ねれば、有線LANが引けない屋外や移動中でも安定した配信が可能になる。
デメリット:
- 他の回避策よりも費用が掛かる:
専用機材が必要なためレンタル費が約4万円(/1日)ほど発生します。配信の日数が多ければ多い程この費用もアップしていきます。
ただ、回線が止まるデメリット(信用の失墜)と比較してどちらが高いでしょうか?
企業の決算発表や、有料チケットのオンラインライブなど、配信の停止が直接的な損害に繋がるような重要なイベントでは、今や必須のテクノロジーです。
トラブル発生!その時あなたはどう動くか?
万全の準備をしていても、トラブルの可能性はゼロではありません。
いざという時に冷静に対処するための、実践的なトラブルシューティング手順を頭に入れておきましょう。
Step 1: 問題の切り分け
「配信が止まった!」その時、原因はどこにあるのか?
- PC・配信機材の問題か?
→ 配信ソフトは正常に動作しているか?PCはフリーズしていないか? - 回線の問題か?
→ 配信ソフトに「ビットレート低下」「再接続中」などの警告は出ていないか?
Step 2: 回線状況の客観的チェック
配信PCのブラウザで、Speedtest.netなどの回線速度測定サイトにアクセスします。ここで確認すべきは「UPLOAD(上り)」の数値です。
この数値が極端に低い、あるいは計測自体ができない場合、回線に問題があると断定できます。
Step 3: バックアップ回線への切り替え
問題が回線にあると確定したら、躊躇なく用意しておいたバックアップ回線に切り替えます。1. メインのLANケーブルを抜く。
2. 用意しておいたモバイルルーターや、テザリングをONにしたスマートフォンにPCを接続する。
3. 配信ソフトが自動的に再接続し、配信が再開されるのを待つ。
この切り替え作業は、10秒~30秒程度の配信断絶を伴います。
しかし、不安定な回線でカクカクの映像を流し続けるより、潔く一度リフレッシュした方が、視聴者の体験としては遥かにマシです。
Step 4: 視聴者へのアナウンス
可能であれば、別のスタッフがSNSやチャット欄で「現在、機材トラブルにより映像が乱れております。ただいま復旧作業中です。ご迷惑をおかけし申し訳ございません」といったアナウンスを迅速に行いましょう。
沈黙は、視聴者の不安と不満を増大させます。
まとめ:最高のコンテンツは、最高の「土管」から生まれる
冒頭でお話しした私の失敗談。あの時、もしスマートフォンのテザリングという「保険」がなかったら…考えるだに恐ろしいです。
ライブ配信における映像や音声、素晴らしいプレゼンテーションといった「コンテンツ」は、いわば「水」です。そして、それを視聴者に届ける「回線」は、水を運ぶ「土管」です。どれだけ綺麗で美味しい水を用意しても、土管が錆びて詰まっていたり、穴だらけだったりすれば、蛇口から出てくるのは汚れた水か、ちょろちょろとした滴だけです。
共用Wi-Fiに頼ることは、錆びて穴の空いた土管で水を運ぶようなもの。いつ詰まるか、いつ水が漏れるか分からない、非常に危険な賭けです。
あなたの次のライブ配信を、賭けにしてはいけません。
- 必ず、配信専用の単独有線LANを確保する
- 必ず、メインとは別のバックアップ回線を準備する
- 絶対に失敗できない配信なら、ボンディング技術の導入を検討する
もちろん、かけれる費用は限られています。ただし、これらは単なるコストや手間ではありません。
あなたの届けたい価値あるコンテンツを、最高の状態で視聴者に届けるための、最も重要で不可欠な「投資」です。
もう二度と、私のような悪夢を誰も見ないために、 この記事が、あなたのライブ配信を成功に導く一助となれば、幸いです。
もし気になる方はお気軽にお問い合わせくださいね~